兄弟の相続は不動産に注意!争いを避ける5つのヒントとは
兄弟の相続は不動産に注意すべき3つの理由
兄弟の相続は、トラブルが起きやすいことをご存じでしょうか。親の財産や兄弟の財産をめぐって、元々仲は良かった兄弟間で言い争いが生じるケースは決して珍しくありません。特に魅力的な資産である不動産は、兄弟で相続手続きに臨む際に火種となってしまうケースがあります。
では、なぜ兄弟の相続は不動産に注意すべきなのでしょうか。主な理由は以下の3つです。
1.不動産の取得や売却をめぐって兄弟が対立しやすい
・元々実家に暮らしていた兄が相続を希望しているが、別居している弟も実家を欲しがり対立してしまった
・兄は亡母が所有していたアパートが古く処分したがっているが、弟が売却には反対している
・不動産が多く、兄弟でどれを相続するのか議論が進まない
不動産は現金や預貯金のように簡単に分割することができないため、揉めやすい財産です。上記のように1つの不動産を巡って対立する場合もあれば、売却の有無について衝突することもあります。
2. 疎遠になっている遺産分割協議が進みにくい
遺産分割協議は相続人全員の同意が必要です。しかし、兄弟間が疎遠になってしまっていることも多く、不動産を誰が取得するのか議論が進まないケースもあります。
3.兄弟の配偶者など、相続人以外の親族が遺産分割協議に参加してしまう
不動産は売却するとまとまった大きな金額が入りますし、収益物件を得られるなら安定した収入が増えるという魅力もあります。相続をきっかけに不動産が得られるなら…と兄弟間での不動産の話し合いに、兄弟の配偶者など相続人以外の親族が入ってしまい、遺産分割協議の収拾がつかなくなるケースも散見されます。
兄弟が相続人になるケースとは
実際に兄弟同士で相続人になる場合とは、どのようなケースでしょうか。相続人には順位があり、兄弟は第3順位に該当します。
■法定相続人の順位 ・常に相続人:配偶者 ・第1順位:子どもや孫(直系卑属) ・第2順位:親や祖父母(直系尊属) ・第3順位:兄弟姉妹(甥や姪) |
上記の法定相続人の順位を踏まえて、兄弟が相続人となるケースを解説します。
1.親が亡くなり、子として相続するケース
兄弟で相続するケースの1つ目は、「親が亡くなった時」です。たとえば、兄弟の父が亡くなり母は存命の場合は、母と兄弟が相続人になります。母も死去している場合は、兄弟のみで相続します。このケースの場合、兄弟は第1順位の子(直系卑属)として相続人になります。
2. 兄弟が亡くなり、第1順位・第2順位がいないケース
3人兄弟の内、1人の方が亡くなったと仮定します。この時、亡くなった被相続人に子がおらず、両親も亡くなっている場合(あるいは相続放棄をした場合)には兄弟が相続人になります。このケースを整理すると以下です。
- 亡くなった兄弟の配偶者と、兄弟で相続する
- 亡くなった兄弟に配偶者もいないため、兄弟のみで相続する
- 亡くなった兄弟の配偶者や子など先順位の相続人が相続放棄をしたため、兄弟で相続する
なお、亡くなった兄弟の相続に臨む際は、遺留分は認められません。子として相続する場合とは異なるため注意しましょう。
不動産をめぐる兄弟の争いを避ける5つのヒント
不動産をめぐって兄弟が衝突してしまうと、遺産分割協議が難航し調停や審判に発展するおそれがあります。遺産分割協議がまとまらない場合、相続税申告に影響を及ぼしたり、相続手続き全般が遅れるなどのデメリットもあります。そこで、この章では兄弟の争いを避ける5つのヒントを紹介します。
1.遺言書を作成する
将来相続で争いが起きそう…と思っている方は遺言書を作成しておくことがおすすめです。遺言書があれば誰が不動産を相続するのか決めておけるため、遺産分割協議を行う必要がありません。
2.生前贈与する
兄弟で実家や所有するアパート等をめぐって対立しそうな場合、生前贈与で不動産を特定の方へ渡してしまう方法も考えられます。生前贈与には、以下の注意点があります。
・贈与税や不動産取得税、登録免許税などの税金が発生する(※節税方法もあるため、専門家へご相談ください)
・相続時には相続財産への持ち戻しが発生するおそれがある
生前贈与をする際は、相続発生後のトラブルを減らすためにも将来相続人になる方全員に贈与の事実を知らせておきましょう。
3. 共有状態での相続は避ける
相続時に兄弟間での争いを避けるために、不動産を共有状態で相続する方もいます。しかし、共有状態にしてしまうと、売却したくても共有者全員の同意が必要になってしまいます。また、共有者が亡くなってしまうと、法定相続人が相続権を有するため、共有者が増えてしまいさらに管理しにくくなります
遺産分割協議を丸く収めるために、共有状態を選択する場合はデメリットが多いことを知った上で行うことが重要です。なるべく共有状態は避けて、円満に解決できる道を探しましょう。
4. 調停・審判は長期化リスクを把握しておく
遺産分割協議がまとまらない場合、遺産分割調停を行うことで解決を模索できます。また、それでも争いが続く場合は審判に移行することで解決を求めることが可能です。(調停を行わないことも可能、ただし裁判所の判断で調停を優先させるケースも多い)
調停や審判は、裁判所のペースで進むため、兄弟が求めるペースで解決できるものではありません。また、長期化することも多く、1年以上調停が続くケースもあります。長期化すると相続税申告を未分割状態で申告することになり、不動産相続で利用する方が多い「小規模宅地等の特例」を受けるためには「申告期限後3年内の分割見込書」という書類を用いて余分な手続きを行っておく必要があります。
長期化すると、その分さまざまな相続手続きも遅れます。調停や審判に発展する場合は、弁護士や税理士と連携しながらできる限り安全に相続手続きを進めるようにご注意ください。
5. 異父・異母兄弟は事前に相続対策をしておく
異父・異母の兄弟がいる場合は、面識のないもの同士で相続手続きに臨む必要があります。以下例を挙げて解説します。
①父が亡くなり、前配偶者との子・現在の配偶者・現在の配偶者との子の3人で相続する場合 前配偶者との子、現在の配偶者との子は異母兄弟ですが、このケースでは法定相続分は配偶者が2分の1,各子がそれぞれ4分の1取得できます。 前配偶者との子に財産は渡したくない…と思っていても法定相続人であるため、遺産分割を協力し合う必要があります。長年、前配偶者との子は暮らしていない実家しか財産がなくても、前配偶者との子は法定相続分の財産の取得を主張する可能性があります。このようなケースでは遺言書や生前贈与をあらかじめ検討しておくことが望ましいでしょう。 |
②異母兄弟が2名いる。そのうちの1名が亡くなり、異母兄弟と自身のみで相続する場合 この場合、異母兄弟の相続時には法定相続分が異なるため注意が必要です。父母を同じくする兄弟の2分の1が法定相続分です。このケースでは、父母同一の兄弟は3分の2,異母兄弟であるご自身側は、3分の1が法定相続分です。 |
異母・異父兄弟で相続に臨む場合は、複雑な事情を乗り越える必要があります。遺言書で財産を適切に分配する、トラブルになりそうな不動産は生前贈与する、など対策を進めておきましょう。
まとめ
この記事では、兄弟の相続時で争うことが多い不動産について、争いを避けるヒントを5つご紹介しました。不動産は売却・収益化のいずれであっても相続人にとっては大きな魅力の財産です。だからこそ、兄弟で争いになってしまうケースも少なくありません。しかし、トラブルが長期化してしまうと相続税申告などに大きな影響を与えてしまいます。できれば円満に相続手続きを乗り越えるためにも、生前からの対策を心掛けることがおすすめです。