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賃貸物件相続のメリット・デメリット|税金や売却時のポイントも解説

賃貸物件の相続のメリット・デメリットとは

賃貸物件を実際に相続するにあたっては、どのようなメリット・デメリットがあるでしょうか。この章ではこれから賃貸物件の相続をする可能性がある方も、今相続に直面している方も、賃貸物件の相続の悩みが解決できるようにわかりやすく解説します。

メリット

・家賃収入がもらえる
・資金が欲しい時に売却できる
・次世代にも資産が残せる
・相続税対策になる

家賃収入がある賃貸物件の相続は、現在相続人が得ている勤労などの収入の他に、収益が増えることは大きなメリットでしょう。不動産という大きな資産を手に入れるため、万が一お金が必要になった時は、売却をすればまとまった資金を用意できます。

また、将来自身の相続時にも、次世代に賃貸物件という魅力的な資産を残せるチャンスでもあります。現金や預貯金で相続するよりも不動産の相続税評価は低くなる傾向があるため、相続税対策の効果も高いと言えるでしょう。

デメリット

・遠くに居住している場合重い負担となる可能性
・大規模修繕に備える必要がある
・債務がある場合は相続する必要
・相続人間でトラブルになるおそれがある

たとえば、親が所有している物件を遠方に暮らしている子が相続する場合、大家として重い負担を背負う可能性があります。賃貸物件の管理には空き室をどうするか、老朽化や災害時の大規模修繕はどうするのか、などさまざまな賃貸物件の運営リスクに備える必要があります。

また、ローンで購入している場合は債務を相続する必要があります。

複数の相続人がいる場合は家賃収入や魅力的な物件を巡って、対立が発生し遺産分割協議がまとまらなくなるおそれがあります。

相続と贈与はどちらが有利?

賃貸物件をお持ちの方は、相続と生前贈与のどちらが有利なのか気になるところでしょう。詳しくは以下のとおりです。

①相続が有利になるケース

・贈与税を回避し、相続税は債務控除で押さえて相続したい

・相続トラブルは予想されず、スムーズに相続手続きができる

 (遺言書があれば特定の方へ不動産を引き継げます)

・小規模宅地等の特例が使える

②贈与が有利になるケース

・特定の方に贈与させ、相続トラブルを回避したい

・家賃収入を早めに別の方へ継がせたい

・現金の贈与よりもお得に贈与したい(贈与財産評価は現金よりも評価額が低い)

相続と贈与は、いずれにも有利になるポイントがあり、今のご家族に合っているのはどちらなのか慎重に判断する必要があります。

賃貸物件は本当に相続税対策になる?

賃貸物件を持つことで「相続税対策になる」とお聞きしている方は多いでしょう。では、実際には本当に相続税対策にはつながっているのでしょうか。この章で改めて賃貸物件と相続税対策について紹介します。

賃貸物件は土地も含め相続税評価額が抑えられている

不動産は相続税評価が現金や預貯金よりも相続税評価額が低く抑えられています。また、新地の状態で相続するよりも、賃貸物件を建設した場合は土地の相続税評価額が下がります。

・貸家建付地の価額 = 自用地としての価額 - 自用地としての価額 × 借地権割合借家権割合× 賃貸割

なお、借地権割合は地域によって異なっています。建物の評価も評価減が設けられており、以下のように評価されます。

・貸家=建物の固定資産税評価額×(1-借地権割合(30%)×賃貸割合)

相続時にはさらに「小規模宅地等の特例」が適用できるため、賃貸物件は相続税対策として有効なのです。

参考URL 国税庁 No.4614 貸家建付地の評価

     国税庁 No.4602 土地家屋の評価

     国税庁No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

ローンで購入しているとメリットになる

高額になりがちな賃貸物件を建設する場合は、ローンを組んでいることが多いでしょう。ローンを背負うことは大きなデメリットに感じがちですが、ローンは相続時に債務控除できるため、相続税を抑制する効果があります。重い税金にあえてローンを組んで対策する方も少なくありません。

ただし、相続時には被相続人が遺したその他の債務(例・滞納税など)も相続する必要があり、あまりにも債務が大きい場合には相続人に重い負荷が残るため注意が必要です。

賃貸物件を相続時に売却する|知っておきたい3つのポイント

賃貸物件を相続する時にはメリット・デメリットのいずれも存在しており、ケースによっては売却を検討する相続人もいるでしょう。そこで、この章では知っておきたい売却時の3つのポイントを解説します。

解体しなくても売れるケースは多い

建物が古く、売却を検討する方の中には「解体しないと売れないのでは」と思う方もいるでしょう。建物の耐用年数は法律で決められており、国税庁が公表しているRC(鉄筋コンクリート)なら耐用年数は47年とされます。あまりに古いと今後のメンテナンスも含めて、解体して売却をする方法も十分に考えられます。

しかし、解体しなくても購入を希望する不動産会社があれば、解体費用は不要です。更地にして売却する場合は「住宅用地の特例」(※1)が受けられなくなり、高額の固定資産税を払いながら売却先を探すリスクもあります。

まずはどのような形で売れば良いのか、慎重に判断する必要があります。

参考URL 国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表

(※1) 土地に対する固定資産税が課税される年の1月1日において、住宅やアパートなど、人が居住するための家屋の敷地として利用されている土地については、特例措置で税金が軽減されています。

土地活用の検討も忘れずに

古い賃貸物件を解体する場合、その後土地を売却しなくても「土地活用」ができる可能性もあります。駐車場や借地化するなどの方法で、家賃収入とは別の収入を得る方法もあります。以下のようなアイデアも広く活用されているため、検討してみましょう。

・貸倉庫の設置

・駐車場、コインランドリー

・資材置き場

・テナントの誘致 など

ただし、土地も含めて税金の負担を減らしたい場合、土地にも固定資産税はかかるため、今後も継続する税負担も計算した上で検討しましょう。

不動産、税務の専門家に相談をして慎重に判断を

不動産の維持、売却はなかなか相続人だけでは判断しにくいものです。もしも今後の賃貸物件の維持に悩んだり、新たな活用方法を探りたい場合には、不動産や税務の専門家に相談し、さまざまな方法をじっくりと検討されることがおすすめです。

また、相続開始後に賃貸物件の今後を検討する場合は、相続税の期限(※2)もあるため、時間に追われてしまう可能性もあります。

できれば生前から家族で賃貸物件を今後どのように相続し、活用していくのか話し合い、専門家とともに方向性を固めることがおすすめです。

(※2)相続税申告・納付の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。

まとめ

本記事では賃貸物件相続について、メリット・デメリットを交えながら詳しく解説しました。賃貸物件は未来につながる大切な資産であり、できれば今後の相続のあり方については早くから検討していくことがおすすめです。答えは1つではなく、家族構成や現在の皆様の生活状況などによって、対策方法も異なります。まずはお気軽にご相談ください。