空き家相続時の注意点|特例措置や相続放棄を詳しく解説
空き家の相続時における注意点とは
現在日本では空き家が増加し続けており、政府広報によると使用目的がない空き家の数は、この20年間で「2倍」に膨れ上がっています。では、もしも誰も住まなくなったご実家など、空き家を相続する際にはどのような注意点があるでしょうか。この章でわかりやすく紹介します。
1.管理・税金などのコストがかかる
空き家は誰も住んでいなくても管理する必要があります。放置してしまうと雑草・害虫が増えてしまうだけではなく、不審者に侵入されるおそれもあります。実際に2024年10月には北海道北区で空き家が放火されており、防犯上の対策も講じる必要があります。定期的な維持管理も欠かせません。
また、空き家には固定資産税も発生します。空き家を相続する相続人は、毎年固定資産税を支払っていく必要があるのです。
参考URL TBS NEWS DIG 空き家が全焼した火災は放火 21歳女が家族に連れられて警察に出頭⇒裏付け捜査で容疑固まり逮捕「間違いありません」札幌市北区
2.解体にもコストがかかる
空き家の維持管理にはコストがかかるため、相続の機会に解体を目指す人も多いでしょう。しかし、解体にも高額の費用が発生します。相続時に相続税の課税もある場合は、さらに解体費用も上乗せとなるため、相続人にとって重い負担になってしまいます。
ただし、自治体によっては空き家の解体に補助金制度を用意していることがあります。制度には地域差があるため、見落とさないように注意しましょう。
3.共有名後の場合、権利関係が複雑になる
空き家を複数の相続人で共有名義として所有する場合、権利関係が複雑化するおそれがあります。相続人が亡くなると次の相続手続きが開始されるため、いつの間にか多数の相続人によって共有状態に陥っていることも少なくありません。
相続人が増えすぎると売却・解体なども上手く進まなくなり、長期間にわたって放置せざるを得ないケースもあります。
4.近隣トラブル
空き家の相続後は、管理を適切に行わないと近隣住人との間でトラブルになるおそれがあります。特に雑草や害虫の対策を行っていないと、近隣住民から適切に管理するように強く求められる可能性が高くなります。
空き家の相続時に知っておきたい特例措置とは
空き家相続にはコストがかかってしまうため、これから空き家を相続する方はせっかくの財産であっても重い負担に感じる方も多いでしょう。長年暮らしていない住まい等を相続する場合は、今後どのようなタイミングで売却するべきか悩ましいものです。そこで、この章では空き家相続時に知っておきたい特例措置を紹介します。
空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除とは
相続や遺贈で空き家を取得した後に売却をする場合、最高で譲渡所得から3,000万円まで控除が受けられることをご存じでしょうか。このしくみは「空き家特例」と呼ばれているもので「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」と案内されることもあります。政府は空き家の発生を抑制するために特例措置として、この特別控除を導入しています。
空き家特例は以下3つの要件を満たしていると、適用の対象となります。
(※適用できるのは、現在のところ2027年(令和7年)12月31日までです。)
昭和56年5月31日以前に建築されたこと。区分所有建物登記がされている建物ではないこと相続の開始の直前において亡くなった人以外に居住をしていた人がいなかったこと 引用:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 |
なお、対象となる空き家には、空き家が建てられている土地も含みます。詳しくは上記国税庁リンクよりご一読ください。
小規模宅地等の特例も見落とさない
上記の空き家特例を使用する場合でも、小規模宅地等の特例は併用できることも押さえておきましょう。被相続人が住んでいた宅地を相続する時、相続税が発生する場合には小規模宅地等の特例が適用できる可能性があります。
小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たしていれば宅地等の評価額を最大で8割下げられるものです。
参考URL 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
空き家の相続に備えて知っておきたい4つの対策
空き家の相続は相続人に重い負担となるため、あらかじめ相続に向けて対策を進めておくことがおすすめです。では、実際にはどのような対策が考えられるでしょうか。この章で4つの方法を紹介します。
早めに売却を検討しておく
将来的に空き家となる可能性がある住まいは、早めの売却を検討しましょう。居住している間は売却しにくいですが、介護施設等への入居のタイミングで売却を進めることもおすすめです。立地などの条件によってはすぐには売れないため、早くから売却に向けて不動産会社などに相談してみましょう。
相続に向けた家族の話し合いを行う
空き家の相続は相続人にとって重い負担となるため、相続開始後に押し付け合いになってしまうことがあります。円満な遺産分割を行うためにも、相続に向けて誰が空き家を相続するのか、ご家族内で話し合いを進めることも大切です。
有効活用で収益化を目指す
空き家は財産であり、賢く運用すれば収益につながります。空き家の有効活用も検討しましょう。主な活用方法は以下です。
・賃貸物件(住まい、カフェなど)
・コワーキングスペース
・民泊 など
空き家を活かしたビジネスモデルは多数存在しており、相続をきっかけに収益物件化に成功しているケースも多くなっています。地方のへき地にある物件も、カフェやネットビジネスの拠点化などで成功している事案もあります。じっくりと収益化に向けたアイデアを探ってみましょう。
リバースモーゲージを活用する
リバースモーゲージとは自宅を担保に融資を受ける方法です。主に金融機関や社会福祉協議会などが実施しています。毎月融資の利息分のみ返済を行い、元金の返済は死亡時に住まいを処分してもらうことで完了する方法です。処分できるため、持ち家が空き家にはなりません。
高齢者を対象とした融資のため、年金生活者でも利用できます。ただし、リバースモーゲージは将来の相続人の同意がいること、物件によっては融資対象外となること、長生きをすると返済リスクが高まることなどに注意する必要があります。
空き家を相続放棄する際の注意点
どうしても空き家はいらない、という場合には相続放棄の検討も可能です。相続放棄をすれば、空き家だけではなくその他の債務もまとめて放棄できます。しかし、相続放棄はいらないものだけを放棄するものではありません。被相続人の預貯金や有価証券等のプラスの財産もまとめて放棄することになります。
また、相続放棄は原則として相続の開始を知った日から3か月以内に行う必要があります。
相続放棄はご自身で行える手続きですが、時に慎重な判断を要するため弁護士へのご相談がおすすめです。
まとめ
この記事では、空き家相続時の注意点について、特例措置や相続放棄時の注意点を詳しく解説しました。空き家は相続人にネックとなるケースも多いですが、有効活用につなげることで収益化している成功例も多くなっています。まずは生前からご家族で空き家をどうするべきか、慎重に話し合いを重ねましょう。