今知るべき青色申告|不動産オーナーがやるべき相続手続きとは
不動産オーナーの相続には青色申告が必要?
不動産オーナーだった被相続人が亡くなられた場合、一体どのような手続きが必要なのか悩むご家族は決して少なくありません。まずは相続税申告に焦点を絞り、申告に向けた財産評価に追われてしまいがちです。
しかし、不動産の相続では「青色申告」にも注目しておきたいところです。不動産オーナーの相続には、以下に挙げる青色申告に関する知識を持っておきましょう。
青色申告とは
そもそも青色申告とはどのようなものでしょうか。青色申告とは、以下の方が対象となる所得税の申告を意味します。
■対象となる所得をお持ちの方 ・不動産所得 ・事業所得 ・山林所得 |
上記のとおり不動産所得は青色申告の対象となるため、相続で収益のある不動産を引き継ぐ場合には、青色申告の対象者となるのです。
なぜ不動産オーナーの相続に青色申告が必要?
不動産オーナーだった被相続人から不動産を相続する場合には、生前に被相続人が青色申告の承認を受けていたかどうか確認しましょう。青色申告は事前に届け出が必要であり「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。詳しくは後述しますが、青色申告は自動的に相続人に引き継がれるものではありません。
不動産所得がある青色申告の場合、「事業的規模」に該当していれば申告が認められており、おおむね「5棟10室」という基準があります。詳しくは以下リンクをご確認ください。
参考URL:国税庁No.1373事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分
青色申告で得られる3つのメリット
不動産オーナーが青色申告をすることで得られるメリットには、具体的に以下3つが挙げられます。これからオーナーを承継する方も、ぜひご一読ください。
1.青色申告控除が得られる
青色申告には控除があります。事業的規模をクリアし要件に沿って手続きを進めることで55万円の控除が受けられます。さらに、電子帳簿保存などの要件をクリアしていると、細大で65万円までの控除が可能です。
所得税の控除を受けることで住民税などを下げる効果もあります。これは漏らさずに押さえておきたいですね。
2.貸倒損失の一部を経費にできる
もしも回収できない家賃や地代などの金銭債権が発生していたら、年末時点における貸倒れによる損失の見込額として、金銭債権合計額のうち5.5%以下の額は必要経費として認められています。(貸倒引当金勘定に入れる)
3.赤字を翌年以降3年間繰り越しできる
不動産オーナーとしてこれから建物等を承継すると、修繕や管理などに関する問題に直面することが増えます。思っていたよりも支出が多いことに驚く新オーナーも少なくありません。
しかし、不動産を運用していくにあたって不動産所得以外の所得と損益を通算しても赤字になる場合、その年の赤字を3年間繰り越せるのです。たとえば相続をきっかけに不要な建物を解体する場合に生じる高額の支出も、必要経費として計上できます。
(※令和5年4月1日以降に特定非常災害の指定を受けた災害で被害があった場合の損失は、繰越期間が最大で5年間まで延長されます。)
青色申告を相続人が行う場合の注意点
今後新たな不動産オーナーになるために相続手続きを進めていく際には、遺産分割・相続税申告に加えて青色申告についても必要に応じて手続きを進めましょう。では、実際に相続人が青色申告を行う場合にはどのような注意点があるでしょうか。この章で詳しく解説します。
亡くなった方の青色申告は相続人へ引き継げない
被相続人が生前に青色申告者の対象であり、必要書類を提出して青色申告を行っていたとしても、相続人へ自動的に引き継がれることはありません。
たとえば、不動産の相続手続きには相続登記が挙げられますが、自動的に青色申告が反映されるようなことはありません。
不動産事業を承継する新オーナーは、新たにご自身の青色申告のために「青色申告承認申請書」を提出する必要があるのです。
(なお、すでに新オーナーが青色申告を行っている方の場合には、新たに申請書を提出する必要はありません。)
■相続時のヒント
青色申告以外にも、新たな事業者になる場合には税務署へ開業届も必要です。漏れなく進めましょう。
書類には提出期限がある
相続をきっかけに青色申告を受ける場合には、上記のとおり青色申告承認申請書を提出する必要があります。この書類には提出期限が設けられているため注意が必要です。加えて、書類の提出日は被相続人が亡くなられた日によって異なります。詳しくは以下です。
■提出期限は3種類 死亡日が1月1日~8月31日 →死亡日から4か月以内 死亡日が9月1日~10月31日→死亡した年の12月31日まで 死亡日が11月1日~12月31日→死亡した年の翌年2月15日まで |
いかがでしょうか、書類の提出期限は意外に「短い」と感じませんか。遺産分割協議が終わっていないという方も決して少なくないでしょう。青色申告承認申請書は遺産分割協議を待たなくても手続きできます。遺産分割協議が完結していない場合、一旦被相続人の不動産は相続人全員で共有状態となるため、法定相続人全員が提出することが可能です。
被相続人の準確定申告も必要
不動産オーナーだった被相続人の所得については、相続の開始があったことを知った日の翌日から「4か月以内」に準確定申告を行う必要があります。(被相続人に所得がなければ不要)
準確定申告をすると、医療費控除が適用されれば税金が戻る可能性があります。ただし、戻される税金は相続税の対象となるためご注意ください。
相続人が2名以上いる場合、連署で提出する必要があるため、相続開始後は早急に手続きを進めることを忘れないでおきましょう。
参考URL:国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
まとめ
今回の記事では、不動産オーナーが相続する際に意外と盲点になる「青色申告」について、詳しく解説しました。相続開始後にはさまざまな手続きを進める必要があるため、青色申告や準確定申告などの手続きが遅れてしまうリスクがあります。
しかし、いずれも漏れなく進める必要がある大切な手続きです。不動産のある相続が今後予想される場合は、不動産や税の専門家に相談しながら、対策を進めておくことが望ましいでしょう。青色申告の概要を知りたい場合は、国税庁以下リンクをご確認ください。
参考URL :国税庁 No.2070 青色申告制度