賃貸物件を相続したら|家賃収入の取り扱いや注意点とは
相続財産に賃貸物件が含まれていたらどうする?
ご家族(以下:被相続人)が亡くなり相続が開始されたら、まずは生前にどのような種類の財産を所有していたのか調べる必要があります。
不動産をお持ちだった場合、相続財産の対象となるため相続手続きが必要ですが「賃貸物件」が含まれている場合はどうすればよいでしょうか。以下で詳しく解説します。
遺言書の存在を確認する
相続が開始されたら、まずは被相続人が生前に遺言書を残していたかどうか調査をします。
遺言書がある場合、賃貸物件の所有権を指定された方が所有権を取得します。
相続人を確定する
遺言書がない場合、相続人を確定するために被相続人の戸籍謄本類(生まれてから亡くなるまで)を収集します。相続人は民法で定められており、内縁の方は含まれません。
常に相続人となる | 配偶者 |
第1順位 | 子や孫(直系卑属) |
第2順位 | 親や祖父(直系尊属) |
第3順位 | 兄弟姉妹 |
ローンを確認する
賃貸物件の相続にあたっては、物件に「ローンの残債」の有無を確認する必要があります。残債がある場合は併せて相続する必要があるため注意が必要です。
管理・入居の状況や積立金なども把握する
賃貸物件の運営時には、管理・現在の入居状況や、アパート・マンションの修繕に関する積立金の状況も把握が必要です。積立金を原因で被相続人が貯蓄していた場合は、相続税が課税されます。
現金での積立金はなく賃貸住宅修繕共済に加入されている場合は、掛け捨て保険のため相続財産には含みません。
参考URL:賃貸住宅修繕共済
相続時における家賃収入の注意点
相続時に賃貸物件を相続する場合は「家賃収入」の取り扱いに注意する必要があります。詳しくは以下です。
生前の家賃収入は被相続人の所得
生前に被相続人へ入金されていた家賃は、被相続人の家賃として取り扱いをします。預貯金口座に入金されていたら、その他の預貯金と合わせて相続財産とします。
・未収の家賃がある場合はどうなる?
被相続人が亡くなった時点で未収となっている家賃がある場合は、未収分も相続財産として取り扱います。たとえば2月1日に被相続人が亡くなり、1月分の家賃が未収となっていた場合は、1月分の家賃を相続財産に計上する必要があります。
滞納されている家賃が高額であっても相続税を支払う必要があるためご注意ください。
支払期日が来ていない家賃は相続財産に含まない
支払期日が来ていない家賃がある場合は、相続財産に含みません。
たとえば、10月の家賃が10月末日に振込となっている場合に10月15日に亡くなられたと仮定します。
未払状態となっている家賃は支払い日に計上する(財産評価基本通達36-5)ため、期日が来ていない10月分は相続財産に含まなくてOKです。
参考URL:国税庁 第2款 所得金額の計算の通則法第36条《収入金額》関係 〔収入金額〕(不動産所得の総収入金額の収入すべき時期)
遺言書がある場合は相続発生後から指定された方の所得
遺言書がある場合は、相続発生後(相続開始日)以降の家賃は賃貸物件を相続する方が受け取ります。
遺産分割協議時の取り扱いには注意を
遺言書が無く、遺産分割協議を行う場合は次の点を注意しましょう。
・遺産分割協議がまとまるまで
不動産は共有状態となっているため、家賃収入は法定相続分に分けます。
・遺産分割協議がまとまった後
賃貸物件を相続することになった方の収入です。
確定申告・準確定申告が必要
家賃収入のある賃貸物件を相続する際には、確定申告と準確定申告が必要です。
・確定申告 家賃収入を得る相続人が自身の確定申告を①、②のいずれかで行います。
①遺言書がある場合
不動産をもらう方が、被相続人が亡くなった翌日から同年の年末までの家賃収入を確定申告します。
②遺産分割協議をする場合
協議完了前までの家賃が相続人全員に法定相続分に沿って分配されます。よって相続人全員が確定申告します。
・準確定申告
生前に家賃収入があった被相続人については、準確定申告をする必要があります。準確定申告は「相続の開始を知った日の翌日から4か月以内」に申告する必要があり、相続人が複数
いる場合には連署で提出します。
(※相続人がそれぞれ提出することもできますが、他の相続人にその旨を通知する必要があります)
参考URL:国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
家賃収入のある物件は相続トラブルに注意
家賃収入のある物件を相続する際には、トラブルが起きやすいことはご存じでしょうか。そこで、この章ではよくある3つのトラブルを紹介します。
遺産分割協議のトラブル
家賃収入のある賃貸物件は魅力的であり、欲しいと思う相続人が衝突することも少なくありません。相続人同士での話し合いがまとまらず遺産分割協議が長引くと、誰が相続するのか決まらないまま相続税申告の期限に迫ってしまうおそれがあります。
また、遺産分割調停に発展する可能性もあるため、できる限り揉めないように注意が必要です。
ローンのトラブル
ローンの残債あり、その他にもさまざまな借入が見受けられる場合は、重い借金を相続人が背負うことになります。一部の借金だけを相続放棄し、欲しい財産のみを相続することはできません。
生前からローンの残債や借入の実態については、家族間で話し合っておくことが望ましいでしょう。
共有名義にするデメリットも
不動産を仲良く家族で共有名義にすることも可能ですが、共有名義にはデメリットがあることも押さえておきましょう。売却によいタイミングが来ても、共有者全員の同意が必要になるため、せっかくのチャンスを逃す可能性があります。
また、共有者が亡くなると相続が開始され、さらに共有者が増えてしまいます。次世代も見越した相続を目指す場合には、共有名義は慎重に検討しましょう。
まとめ
本記事では不動産をお持ちの方が直面する「賃貸物件の相続」について、家賃収入の取り扱いの視点から詳しく解説しました。家賃収入のある相続は、確定申告・準確定申告もあるほか、遺言書の有無などによっても取り扱いが異なります。
現在賃貸物件を有しており、今後の相続を見据えて対策を検討したい場合は言い争いを避けて円満に相続するためにも、家族間でじっくりと話し合っておくことが大切です。
また、高額の家賃がある場合は不動産相続に強い専門家に生前から相談を開始することがおすすめです。